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第3回 「シンプルウォッチ」

自動巻モデル


時計は人間の知識と美意識の結晶である。ひとつひとつからその時計が生まれた時代の社会や文化、技術をうかがい知ることが出来る。
自分の知りえない時を刻み、過ぎ去った時の瞬間を知る時計、それはかつてのその時計の主人のさまざまな思いを知らず知らずのうちにゼンマイの動きとともに刻み、今に到ってその思いをまるでオーラのごとく発している。
もし、誰かに「あなたが今後、後世に残しておくべきと思うものは何ですか?」と聞かれたら何と答えるだろうか。美術品、ジュエリー・・・人それぞれに思いを込めたものがあるはずだ。私はまず真っ先に機械式時計をあげる。
人間の手を借りて動く機械式時計には電子式とは全く異なる微細な動きの美学があり、それを持つ人との間に連帯感が生まれ、まるで肉体の鼓動に等しいリズムを持つ。
これからも文化、技術の発展とともに機械式時計の魅力はさらに増していくであろう。ただ、もし後世に機械式時計の精緻な美しさを語り伝えられないようだとしたら我々は大いなる過ちを犯すことになるといっても過言ではない。

“後世に語り継がれる機械式時計”=パテックフィリップの機械式時計の中でもリュウズでゼンマイを巻かずに、腕の動きによってローターを回転させてゼンマイを巻き上げる自動巻機構は1950年代からその驚異的なムーブメントが製作されている。
まずは1953年に多くの愛好家、コレクターから絶賛された自動巻キャリバー12−600である。このキャリバーは自動巻ムーブメント時代の到来を告げるものであり、また、そのデザインばかりでなく、高い巻上げ効率によっても他を引き離していた。
1960年代には、よりフラットでエレガントな腕時計が好まれるようになり、さらなる機械の“薄さ”が要求されてきた。パテックフィリップは、キャリバー27−460の発表によってこれに応えたのである。その“薄さ”に加え、それまでの緩急針が廃止され、緩急調整は新開発のジャイロマックス・テンプにより行われることになった。このことは時計業界に大きな衝撃を与えた。


caliber 12-600


その後もパテックフィリップのムーブメント開発者たちは探求を重ね、1977年にはキャリバー240を発表した。この、他には類のないムーブメントはローターのサイズを最小化し、地板の中に統合させ余分な厚さを無くし、わずか2.53mmという驚異的な“薄さ”を実現したのである。キャリバー240は世界で最も薄い自動巻ムーブメントであり、今日もその記録はやぶられていない。
このキャリバーを備えた現行のシンプルウオッチモデルはカラトラバRef.5120Ref.5120/1Ref.6000、ゴールデン・エリプスRef.3738/100がある。

その他、現在生産されている自動巻ムーブメントは、中央ローターを備えたキャリバー315キャリバー330キャリバー324があり、キャリバー315は、カラトラバRef.5127Ref.5127/1Ref.5108Ref.5118などのシンプルウオッチに搭載されている。
キャリバー330キャリバー315を小型化したムーブメントであり、スポーツエレガンスモデルに搭載されている。
また、キャリバー324は2004年に発表された比較的新しいムーブメントである。21金ゴールドローターの増大により巻上げ効率を大幅にアップするとともに、歯車曲線を改良し、歯と歯がどこで接触している時も同じ力が伝達されるよう設計されている。これによりテンプの振り角、計時精度を共に大きく向上させた。このムーブメントはカラトラバRef.5296に搭載されている。

“後世に語り継がれる機械式時計”、高度に熟練したクラフトマンが細心の配慮を込めて組み立てるムーブメント、最高のタイムピースをめざして絶え間ない探求を続ける開発者たち、ジュネーブのマニュファクチュールにおいては完璧をさらに超えようとする努力が日々、続けられているのである。
文責 S,Nakaminato

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