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クロノグラフとはクロノ(時)グラフ(記録する)という名の通り、通常の時計機能の他にストップウォッチ機能を持つ時計のことである。ギリシア語を語源とし、特に「クロノ」という単語はギリシア神話の時間神クロノスにその名を由来する。時間神であるクロノスはローマ神話のサトゥルヌスと同一視されることが多く老人の姿で描かれ、時の象徴として翼を持ち、その手には大鎌あるいは砂時計を持つ。
時を刈り取るクロノスのごとく、流れ続ける時間を切り取るクロノグラフ、まずはその歴史を見ていくこととしよう。
19世紀初頭、近代化を迎えたヨーロッパ世界では通常の時計とは別に、ある一つの作業、競技などに必要とする時間を正確に計測する機構の出現が渇望されていた。そしてクロノグラフの登場がその要望をかなえることとなる。
最初期のクロノグラフはインキング・クロノグラフと呼ばれ、計測にインクを用いる構造になっている。インク受けになっている針の部分にインクを注入し、ボタンを押すと針が動き始める。計測したい時間にもう一度ボタンを押すと針が下に落ち、インクの跡が時間経過の記録として残る。パテック フィリップでもこのタイプの懐中時計を製作している。この後、クロノグラフが複雑機構の一つとして懐中時計に組み込まれるのは19世紀後半ころからである。
20世紀に入り腕時計が普及し始めると、クロノグラフ機構も腕時計に組み込めるように、より小型化されることを要求されるようになった。
パテック フィリップでは1926年、最初のクロノグラフ付き腕時計の生産を開始、翌1927年に販売している。また1927年には早くも計測用の針を二つ持つ、複雑なスプリット・セコンド・クロノグラフの生産が始まっている。
その後もパテック フィリップでは極々少数ずつではあるが様々なデザインのクロノグラフ及び、スプリット・セコンド・クロノグラフ、さらには永久カレンダーにクロノグラフを組み込んだ超複雑機構の機械式腕時計などを生産し続けてきた。
クロノグラフは非常に複雑で精緻を極める機構ではあるが、使い方そのものはいたってシンプルである。一般的に腕時計のクロノグラフ機構操作はケース右側についたプッシュボタンで行なう。過去にパテック フィリップにおいてもシングルボタンのクロノグラフなども生産されているが、通常は2時と4時の位置にボタンを配する。2時のボタンでクロノグラフがスタートし、経過時間は文字盤上の積算計に表示される。もう一度、同ボタンを押すとクロノグラフ針が停止し、この状態で4時のボタンを押すとクロノグラフ針が帰零、積算計がリセットされるという仕組みになっている。

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現在、パテック フィリップのクロノグラフとして販売されているRef.5070も操作方法は同様である。1998年に発表された同モデルは一見すると非常に現代的なデザインであるが、1935年に同社がただ1つだけ生産したスプリット・セコンド・クロノグラフへのオマージュでもある。その年間生産数は僅か250本、しかもあくまでそれを上限としている。いかに多くの人からその製品を求められようと、品質にこだわり一切の妥協をせずに最上質のタイムピースをその範囲内でのみ生産する。パテック フィリップの社是は昔も今も同様である。
現行のクロノグラフモデルのラインラップとしては、永久カレンダーのRef.5970、スプリット・セコンド・クロノグラフと永久カレンダーのRef.5004、そして昨年発表された、世界時計製作史上、最も薄いスプリット秒針コラムホイールクロノグラフムーブメントを搭載したRef.5959などがある。より複雑な機構を搭載したこれらのモデルがRef.5070以上に稀少なタイムピースであるのは想像に難くないであろう。特にスプリット・セコンド・クロノグラフRef.5004、Ref.5959に関しては、受注生産という形で販売が行われている。
そして2006年、パテック フィリップは再び愛好家・コレクターたちの熱狂的な期待に応えた。パテック フィリップが開発、製作、仕上げをすべて行う完全自社開発・製作の年次カレンダー搭載自動巻きクロノグラフRef.5960が発表された。
このモデルの特筆すべき点として、従来の機構では歯車同士の摩擦が大きいため、クロノグラフ秒針を常時作動させることは避けなければならなかった。だが、この新しいシステムにおいては、クロノグラフ秒針を常に回転させてセンターセコンドのように用いることができるのである。それゆえこのモデルは、これまでのクロノグラフに見られたスモールセコンドをもはや必要としないのである。
この機構は新たに発表されたノーチラスRef.5980/1にも搭載されている。
伝統と技術革新を完璧に統合したパテック フィリップのクロノグラフは「タイムレス」であり、その永遠の生命は疑う余地がないのである。
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