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機械式時計を製作する時計職人にとって、新しい複雑機構の発表は劇的な出来事である。そして、その装置の基本的な概念や完成度が優雅なものであるほど、それは大きなセンセーションを巻き起こす。
1996年、世界中の時計・宝飾業者が集まる「バーゼル・フェア」で、ベールを脱いだパテック フィリップの年次カレンダー搭載の腕時計は、まさに真の技術革新だけが実現できる機能美を世に示した。この時計こそパテック フィリップが4年もの歳月をかけ開発、特許を取得した、世界初の年次カレンダー付ムーブメント、キャリバー315SQA24Hを搭載した、Ref.5035である。そして、この魅力的な時計は、愛好家の圧倒的な支持を獲得し、同年、モントル・パッション誌の主催する<ウォッチ・オブ・ザ・イヤー>に選定されたのである。
年次カレンダーはその名称にあるように、月末が30日と31日の月を自動的に判別し、1年に一度、3月1日(2月の末日は判別しない)にのみ日付を調整するだけの実用上非常に便利な機構である。
これまで、日付調整機能のついた時計は2つの種類しかなかった。1つは普通の日付だけを表示するシンプルカレンダータイプ。これは単純構造により操作も容易であり、価格も比較的安価である。しかし、31日以外で終わる月の末日には、手動による日付調整が必要になる。そして、もう一つはいわゆる永久カレンダーと呼ばれるタイプで、曜日、月、月相を表示し、閏年の日付調整すら必要としない。この永久カレンダーは確かに便利な機構であり、また、それは長年に亘る時計技術の積み重ねが生み出した素晴らしい機構でもある。しかし、その一方で永久カレンダー時計は止まったままで何年もの間使用せず、いざ使ってみようとした場合に、その年が閏年かどうか調べたうえでカレンダーを調整しなければならないことや、最高級の機械式時計に内蔵されることが多いため、価格が高額になるという欠点もある。こうしたシンプルカレンダーや永久カレンダーの欠点を補っているのが、システムを簡素化した年次カレンダーなのである。

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この年次カレンダームーブメント、キャリバー315SQA24Hは従来のカレンダー機構に使用される日付変更機構に代わって、特殊な歯車を主体とするロータリー方式を採用している点が大きな特徴である。これは24時間で日付を1日先へ進める歯車が、小の月に近づくと、月の大小を識別するカムと連動して、もう一日分さらに先送りする仕組みとなっている。まさに時計製作の名匠、パテック フィリップの実力を遺憾なく立証しているといえよう。
このムーブメントは、ムーンフェイズ、パワーリザーブを備えた、Ref.5146、ブレスレットタイプのRef.5146/1、ダイヤ付ベゼルを配したRef.5147、女性用にマザーオブパール文字盤とダイヤ付ベゼルを配したRef.4936、Ref.4937などに搭載されている。
また、トノー型ケースのRef.5135や、パテック フィリップでは永久カレンダーに用いられてきたダブルギッシェ(小窓による曜日、月の表示)を採用したRef.5396は、2004年に発表されたムーブメント、キャリバー324SQALU24Hを搭載している。このムーブメントは21Kゴールドローターの増大により巻上げ効率を大幅にアップさせた。また歯車曲線を改良し、歯と歯がどこで接触している時も同じ力が伝達されるように設計されている。これによりテンプの振り角、計時精度が共に大きく向上した。パテック フィリップにおける時計製作の伝統と驚異的な技術革新を見事にブレンドした、新しい年次カレンダー搭載タイムピースなのである。
文責 S.Nakaminato
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