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機械式時計の始まりは、13世紀頃のヨーロッパとされる。14世紀にはいると、時計は教会や王宮などに備えられ、その地域の時を時間という目盛で区切るようになった。
そして大航海時代。機械式時計は、ただ時間を区切る目盛ということではなく、より正確な時間の計測を求められていくようになる。自国の利益を得るため、ヨーロッパの各国は新大陸を目指し外洋へ出て行った。外洋上で現在地(経度)を知るためには、より正確な時間を計測できる時計が必要だったのだ。各国は多額の賞金を懸け、当時の科学者は競って正確な時計作りに注力した。
17世紀には携帯可能な機械式時計が発明され、その時間という目盛は個人と社会全体の目盛と変化していく。労働時間という概念や、生産性という概念が生まれたのもこの時代といわれている。正確な計測が出来る時計は、産業革命後の資本主義社会の形成に、重要な役割を果たすこととなる。正確な時間を計測する時計の発明が、近代、現代社会を発展させてきたと言っても過言ではなかろう。
トゥールビヨンとはフランス語で「渦巻き」「旋風」などを意味する言葉である。18世紀に考案されたシステムで、時計の調速機構が渦巻きのように回転する様子からこう呼ばれる。視覚的な動きの面白さを持つ一方で、機能そのものは機械式時計の精度の誤差を限界まで減らす為に存在する究極のシステムである。
機械式時計は常にその動作に重力の影響を受けるため、姿勢によって精度にばらつきが生まれる。トゥールビヨンの仕組みは調速機構を固定するのではなく、休みなく回転させることで各姿勢差を相殺させてしまうという逆転の発想から生まれた。

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パテック フィリップにおいても、飽くなき精度の追求の過程で幾多のトゥールビヨンが製作された。これらのモデルは機械式時計全盛の20世紀半ばまでに、ジュネーブ天文台の計時精度コンクールにおいて常に上位を独占した。なお腕時計にトゥールビヨンが組み込まれたのは1945年、ジュネーブ天文台用にアンドレ・ボルナンが製作した時計がその第一号である。
トゥールビヨン製作上の最大の難点は、出来る限り重力の影響を受けにくくするよう、調速機構を回転させるためのゲージをいかに軽くかつ丈夫に作るかにある。2003年発表のパテック フィリップの10日巻きトゥールビヨンRef.5101の回転ゲージは72個ものパーツから構成されるが、その重量は僅か0.3グラムである。この美しい機構は一分間に一回転し、その様はシースルーバックとなった時計の裏側から鑑賞することが出来る。
なお文字盤側に窓を設けないのは、繊細なトゥールビヨンの機構に用いるオイルを紫外線の影響による劣化から防ぐためである。パテック フィリップの完成された美しさは時計の品質を最大限に高め、維持することにおいて生まれる必然の美である。そのためにはいかなる妥協も許さないことがご理解いただけよう。
現在トゥールビヨン搭載のモデルとしてはスカイムーン・トゥールビヨンRef.5002を筆頭に、10日巻きトゥールビヨンRef.5101、ミニット・リピーターを付加したRef.3939H、ミニット・リピーター、永久カレンダーを付加したRef.5016が生産されている。
文責 S.Tsunoda
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